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心療内科医になって良かった

先週土曜日、私が心療内科医として最初に治療した患者さんの結婚式に出席しました。感激で、涙の連続でした。私が治療した当時、医師として10年目ぐらいで、自分の専門分野である循環器や呼吸器疾患に関しては、それなりに自信があったのですが、心療内科はズブの素人で、別の病院の先生や臨床心理士の方に指導していただきながらの診療となりました。

 彼女は小学校6年生で、身長150cmぐらい、体重は31kg。半年間他院で治療したのですが改善せず、当院に来院されました。小学校6年生ですから、私の子供みたいなもので、この子が拒食症になるなんて想像も出来ませんでした。

 心療内科医として初めての患者さんですから、正直言って、どのように治療してよいか分かりません。とにかく、仲良くなって、彼女の気持ちを聞きだす努力はしましたが、どうして拒食症になったのかはまったく分かりませんでした。しかも、運動会や修学旅行といったイベントごとに彼女の症状は悪化の一途を辿っています。

 夏休みを迎えるときには28kgまで体重は減少し、本人や家族と相談して入院加療することになりました。この時、正直言って死を覚悟していましたし、私が治療を継続してよいのか本当に悩んでいました。後で分かったことですが、ご両親も死を覚悟していたようです。

 彼女に転院を勧めたのですが、この病院で治療したいということだったので、とにかく出来る限りの工夫をしましたし、家族にも全面的に協力していただきました。結果的に回復していくのですが、患者さんも家族も同じ方向で診療できたことが一番大きかったと感じています。

 中学3年生の夏休みに、治療は終了し、その後彼女とは音信不通になっていました。ところが、数年前、私が一関に講演に行った帰りに、一ノ関駅のトイレに入ったら、何と彼女のお父さんと再会したのです。今、彼女はメル友の一人です(笑)。

 結婚式で、満面に笑みを湛えて新郎と一緒に入場してきた彼女と目が合ったとき、彼女が一瞬涙顔に変わって、私にも彼女にも拒食症と戦っていた時代のことが去来したのだと感じました。結婚式の最後に、彼女が家族にあてた手紙の中で、私との出会いについて触れてくれていて、その時、心療内科医になって良かったと実感しました。

 彼女が元気になってくれなければ、私は心療内科医として仕事を続けることは無かったと思います。そういう意味では、彼女にとても感謝しています。それから、あきらめなければ何とかなるのだということも、治療を通して教えてもらいました。

 苦労をかけた分、ご両親を大切にして欲しいと思います。そして、二人の末永い幸せを祈っています。
桜井充 * メルマガ * 16:18 * comments(0) * trackbacks(0)

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